全身筋肉の大男、俺の友人の大西がぼそりとつぶやいた。
奴はときどきこんな風に話し出す。
「俺、どうも前世は女のようだ」
「へ、いきなり何言ってんだよ。」
あまりの脈絡のなさに、俺も珍しく戸惑った。
が、やはりここは関西人。
間髪入れず突っ込みは入れる。
「だいたいお前、普通前世って言ったら、有名人だったとか、貴族だったとか、もうちょっと範囲狭めるだろ。
女ってなんだよ、人間の二分の一じゃん。そりゃあ男か女かどっちかしかないだろ。」
いつもならここで激しくやり返してくる大西も、なぜかいつもの激しさは消えている。
「いや、なんかわかるんだよ。最近なんか見えてきたんだ。」
それにしてもいきなり突拍子もないことを言い出す男だ。
大体その大きな体を揺さぶりながら他人を威圧して歩く男の言うことか。
しかし奴も中学の頃からの大事な連れだ。
このまま放置もできない。
「なんかへんなもんでも見えるんちゃうやろなー。」
「いや、そういう物理的なものじゃぁないんだ。」
「お前なんか妙に標準語やぞ、大丈夫か?
しかも物理的じゃないってことは、やっぱり霊とかそういうのか?」
「いや、そうじゃない。・・・精神的なものだ。」
「精神的ってなんやねん、わけわからんぞ。」
「いや、だから、その・・・」
「なんだよ。」
「だから、あれだ、その・・・つまり・・・」
明らかに普段の奴じゃない。
なんか妙なのにとり憑かれたか。
「なんだよ。お前なんか今日おかしいぞ。
なんかとんでもないもんが見えるんか?」
「見えるというか、はっきりわかったんだよ。」
「何がよ。」
「実は俺、お前が好きなんだ・・・」
「え・・・・・」
長い沈黙が二人を包む。
しかしその沈黙を打ち破るはっきりとした声が耳に響いた。
「実は俺もだ」
(俺もかよ)
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